屋号『山只』。寛政六年（1794）、初代藤兵衛が、分家し『何も無いところから生み出す。』ということを意識し、己を戒める為に付けた屋号。
『何も無いところから生み出す。』とは、窯に始まり、窯道具。すべてを作る事から始まります。 『高田の土をよく知る事』、そして『独創と革新』。それが、歴代藤兵衛に引き継がれてきた哲学 であり『山只』ブランドの原点。

山只華陶苑　藤兵衛窯七代目　加藤 智也
「摺り鉢」に施される「波紋櫛目」にたどりつくまで、研究と鍛錬を重ね、8年ごしで本品を完成させた。数々の展覧会で受賞する気鋭アーティストとしても活躍。

高田で採れる原土、「青土（あおと）」。文字通り掘り出した土の色が、少しネズミ色がかった青色をしているため、この様に呼ばれるようになりました。優れた特徴を持ち合わせている土です。この土を使い、作られています。
山只華陶苑のすり鉢をすり目に沿って触れると、ザラっとします。このざらつきは、高田の土の性質や土の製法に由来します。山から掘り出した原土を水簸して粘土にする方法が、細かな粒子の間に大きな粒子が入るかたちになる為ざらつくのです。磁器土で出来ているものや、土物ですり目に釉薬を掛けた物と比べると違いが分かります。

すり鉢は長く使っているとすり目が欠け、摩耗します。この小さな小さな欠けは磁器やガラスの様に鋭くはありません。摩擦の元になった『ざらつき』である土の粒子が、小さなかけらの鋭さを優しくガードしています。
山只華陶苑の先代は、小さな子供のお腹の中に、鋭いかけらを入れたくない、そんなすり鉢に生じる欠点にも優しく対応してきた先代の考えと、青土の土の性質から、今の代までこの土を使い続けているそうです。

すり鉢は、すり目がうつわ全体の施されている事から、どの面でも摺れていると思われています。しかし、山只華陶苑の七代目は、「すれている場所はすり粉木がすり目に逆らっている場所だけなのでは？」と、疑問を持ちました。美しさ、作業性など、さまざまなすり目のテストをし、開発までに約9年を費やして完成したのが『波紋櫛目』でした。食材を上へ逃げにくくし、その場ですれる為、早くすれるようになりました。食材への摩擦熱が少なく、香り高くすれるだけでなく、力のない高齢者の方にも、少ない力でお使いいただけます。また、この目立ての摩擦力は回す方向に関係なく、する食材をその場所に止めておくため、右利き・左利きに関係なく使っていただけるのです。